「また裏目だ……」
パドックの気配も、専門紙の印も信じて買ったはずなのに、直線で愛馬が沈んでいく。競馬ファンなら誰もが経験するこの「裏目」の連鎖。しかし、私はエンジニアだ。感情に振り回されて負けるのは、システムのバグを放置するのと同じではないか。
そう考えた私は、長年愛用しているデータベースソフト「FileMaker」を立ち上げ、カオスな競馬場を「物理フィールド」として再定義することにした。ターゲットは、分かっているようで誰も分かっていない東京ダート1400m。
今回は、私が構築した「予測RPCIエンジン」の全貌と、データが弾き出した驚くべき結論を公開したい。
1. 砂の物理特性をデバッグする:含水率「6.1%」の境界線

まず着手したのは、馬場状態の数値化だ。良馬場といっても、パサパサの砂と、適度に湿った砂では物理特性が全く異なる。
膨大な過去データをデバッグして見つけた一つの解。それが含水率6.1%という境界線だ。 この数値を下回ればパワー重視の消耗戦になり、上回ればスピードが活きる。私はFileMakerに、この境界線を基準とした自動判定ロジックを組み込んだ。これにより、「良馬場」という曖昧な言葉に惑わされることはなくなった。
2. 予測RPCI:群れの熱量を「ポイント」で可視化する
次に必要なのは、レースの「ペース」を予測するアルゴリズムだ。私は、競走馬の脚質を以下のエネルギー値として定義した。
- 逃げ:10点(ハナを争う強い意志)
- 先行:3点(好位をキープする推進力)
これをFileMakerの「自己リレーション」機能を用いて、レース単位で合算する。算出された合計値を頭数で割り、独自の係数を掛けることで導き出されるのが「予測RPCI」だ。
計算式:
基準RPCI(47.8) - ((合計ポイント / 頭数) * 係数)
あるレースでシステムが「予測RPCI 39.5」という数値を弾き出した。これは歴史的な超ハイペースを意味する「前崩れアラート」だ。案の定、人気を背負った逃げ馬たちは直線で力尽き、後方で死んだふりをしていた差し馬が突き抜けた。
3. ヘニーヒューズの「バグ」を探せ:血統と展開のクロス分析
このシステムが真価を発揮するのは、種牡馬の特性と掛け合わせた時だ。 例えば、東京ダ1400mの絶対王者ヘニーヒューズ。最強に見えるこの種牡馬にも、特定の条件下で発生する「致命的なバグ(負けパターン)」が存在する。
私の分析では、「予測RPCIが42.0以下」かつ「含水率が低い(パサパサの砂)」という条件下では、米国型のスピードが削がれ、欧州型のスタミナ勢に逆転を許す確率が跳ね上がる。人気馬がなぜ飛ぶのか。そこには運ではなく、明確な物理的理由があった。

4. 感情を排除する。AIと人間のハイブリッド司令室
結局、競馬で一番の敵は「自分の感情」だ。負けが込むとロジックを無視して穴を狙い、裏目に出る。
私のシステムは、その弱さを補完するためにある。FileMakerが冷徹に「お宝シグナル」を出し、私はそれを出撃命令として承認するだけだ。もし外れれば、それは負けではなく「ロジックの修正が必要なデバッグ対象」と捉える。
このPDCAサイクルこそが、ギャンブルを「知的格闘技」へと昇華させる唯一の道だと確信している。
1400mは始まりに過ぎない
現在、私は明日の東京ダート1400mに向け、主要種牡馬のエネルギー値を一頭ずつインプットしている。地道な作業だが、この「金型」が完成すれば、他のコースへの展開は一瞬だ。
競馬を科学し、カオスを数値でねじ伏せる。エンジニアの戦いは、まだ始まったばかりだ。

コメント